リーディングの王様・洋書
リーディングの対象としては、小説、実用書から果ては製品説明書に至る迄、考えように
よっては何でも対象になり得るので、それこそ範囲は極めて広いのですが、英語学習者がテ
キストブックの次に読んだ方が良いものと言えば、比較的気軽に読める小説等の洋書という
ことになるでしょう。洋書に取り組む迄になってこそ、ようやく今までプールで泳いでいた人が
大海に出て遠泳に挑戦するといった段階に到達したと言えるでしょう。
一口に洋書と言っても、ジャンルも広くアプローチの仕方も様々で、簡単には語り尽くせませ
んが、ここではあくまで「より少ない時間と労力でより多くの効果を」という当初の姿勢を貫い
て、欲張って「リスニング等、他の機能への影響」をも視野に入れながら見て行きたいと思い
ます。
ペーパーバック・デビューなら
スピーキングやライティングというのはアウトプットの能力ですが、そのためにはインプットが
十分なされていなければなりません。自分のペースでインプットを大量に行いたいという場合、
読書が最も手っ取り早い方法ですが、その対象として初・中級者にお勧めなのがペーパーバ
ックです。ペーパーバックは安価のものも多く、最近は入手し易くなっていると思います。
特にGRADEとかLADDERとかなら内容も平易で、初・中級者の方にも読み易く、比較的手頃
な値段で入手できるので、是非お勧めしたいと思います。レベル毎にグループ分けがなされて
いるので、それらを一応の目安として、自分に合った作品を選べば良いと思います。
洋書の多読は、リスニング等、他の機能にも好影響をもたらすという知られざる(知る人ぞ知る!)意外な(本当は当然の)事実
リーディングというと、すぐ受験時代の長文読解とか構文とか英文法とかといったことが連想
されて来て、不快に思う人も多いかも知れません。又、「日本の英語教育は、読解中心だった
から日本人は中々英語を話せる様にならないのだ。」との意見が頻りに主張されていますが、
総論や他項でも触れましたが、リーディングそのものが悪い訳では決して無く、多くの日本人
の場合は、リーディング量が少な過ぎることが問題なのであることを再度強調したいと思いま
す。
リーディング能力を高めることによって、リスニング能力も向上することは、本格的にリーディ
ングに取り組んだことのある人から多く聞かれる感想です。更にアウトプットとしてのスピーキ
ングやライティングの能力も結果的に向上すると言われています。
尤も、リスニングの場合は発音等の問題も関係しているので、必ずしも比例的にリスニング
能力が向上すると言う保証はありませんが、それらの問題をクリアー出来れば、かなり期待が
持てると言って良いでしょう。
次の例などは、リーディング能力を高めることによって、リスニング等の能力も向上するとい
うことの良い例と言えるでしょう。
真剣に英語に取り組んできたSさんは、リスニングがまるっきり弱くて、これまでどんな方法
を用いても聴き取れる様にはならなかったと言います。そこで、ある時Sさんはリスニングを諦
めてリーディングの道を極めようと思い立って、ペーパーバックを大量に読み漁ることにし、大
きく方向転換することに決めました。その甲斐があってか、Sさんも何時しか専門家並みの読
解力が身についていたと言います。
その頃Sさんは、たまたま外国人に接する機会があり、初めは自信は無かったものの、打ち
解けるにつれて、以前だったら信じられない程、楽しく話が進んだと言うのです。一番苦手だっ
た筈のリスニングに関しても、外国人の話が以前より遥かに聴き取り易くなり、喋るのも流暢
になったと実感出来たそうです。
このことからも容易に想像出来る様に、読み、書き、話し、聞くというのは、まるっきり別々の
機能と言う訳ではなく、相互に関連していて、この例の様に、目で読むことを積み重ねていく
内に、耳で聞く能力も向上するという結果が得られるということです。
その際にリーディングの対象として、難解な論説文等よりも、気楽に読める小説等の方がお
勧めです。と言うのは、上記の様な効果を上げる為には、大量の英語をスピードを落とさずに
読み通して行く必要があるからです。
リスニング等、他の能力の向上も考慮した読書法
英語の読解力とか翻訳能力の向上を図りたいというのであれば、現在の自分のレベルに見
合った文章ばかりでなく、より難易度の高い文章に取り組んだりすることも必要になるでしょう。
そうすることによって、より広範囲で高度な語彙も習得され、複雑な構文を読み解く訓練がな
されて、読解力や翻訳力に磨きがかかることになるからです。
しかし、リスニングとかスピーキング等の機能の向上を図りたいという場合には、トータルの
時間が同じとしたら、少し簡単と感じられる位のものをスピードを出して大量に読破する方が効
果的です。リスニングに関しては、発音等の問題を別にすれば、聴き取れない大きな原因とし
て、相手の話しているスピードに聞き手の理解のスピードが追いついて行けないという点があ
ります。
易しい英語の文章を大量に読むことによって、活字が目に飛び込んで来てから、それを理解
するまでのアクセスタイムをドンドン短くしていって、最終的には理解のスピードがネイティブの
人の喋るスピードを超える様になって来ると、リスニングの能力が飛躍的に向上して来ること
に本人自身驚く時が訪れます。
少し簡単だと感じられる程度の、平易な文章で綴られた本を大量に、しかも、なるべく速く読
む訓練を積むことによって、読解力は勿論のこと、リスニングやスピーキングの能力も意外な
程向上します。
理詰めの秀才君の文法力を凌いだ多読の効用
誰もが認める秀才のA君は、理数系の科目が抜群に出来て英語も文法に強く、難解な読解
問題なんかも、彼にかかれば理詰めで難なく解き明かしてくれると評判です。これに対しB君
は成績も普通の、どこにでもいるごく普通の学生で、これといった取り柄もなく余り目立たない
存在でした。
そんなB君が、ある時たまたま見付けた洋書のミステリー小説にはまり、面白さに惹かれて
次々と読破していったというのです。初めは辞書を引き引きで、読むのも遅かったのが、慣れ
るにつれて次第に辞書を引く回数も減って、スピードも加速度的に速くなって行ったと言いま
す。そして、一年程の間にB君は二十数冊を読破していました。
ある時、日本語の文章を英訳する必要に迫られ、その中にどうにも訳しにくいところが若干
あって、皆はA君に助けを求めました。A君は少し考えた後、流れる様な文字でサラサラと書き
連ねました。
皆が「さすがー」と思っているところへ、たまたま居合わせたB君は「そこんところ、僕だったら
こう書くけど。」と言って、“別解”を書きました。A君はそれを見て、理路整然と反論して来まし
た。念の為に、優秀なネイティブの先生に見てもらったところ、なんと「B君の訳の方がnatural
(自然な)表現だ。」と言うのです。
このB君の例は、“英語らしい英語”により近い自然な表現を身に付けたいなら、(初めの内
は簡単なものでも構わないから)大量の英語をインプットすることが如何に大切かを如実に物
語っていると思います。
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